一気に

読み終えちゃったよ仮面の告白。なんでわたし三島作品の中でもこれをいちばんに選んでしまったんだろう…。全然知らなかったよ、これ半自叙伝なんですね。でもよかったような気もする、「こういうひとなんだ」って分かってて読めるし。

かかる状態にあって、私は正しく、「人生に希望をもって」いた!

なんて文章が来たら「うっわあああ来るぞ来るぞおおおこの世の最悪の結末が!!」って思うじゃないですか。そんな感じで超前のめりになって(←この「超」の使い方ダメですよね…読んでて思い知った)読み進めるわけですよ。「へえ、そうなるんですか。それでそれで?おおっこれはもう破滅への……あれ?ああそう、そうなの…ん?んん?って、え、ここで終わり、、、」みたいな(笑)。でもこの「、、、」っていう0.5秒くらいの間で、「…これがある意味いちばん残酷な結末なのかもねえ」って思ってしまう。で、これは自叙伝なので、この先33歳で結婚して45歳で自決するってとこまでわかってるわけで。そう思うと、なんか「抗えないもの」の存在を呆然と感じてしまったり。
まあでも結末をドラマティックにしてしまったらこの小説の意味はないし、それは「嘘を真実にするフィクション」じゃなくてただのフィクションだしね。ああ、「嘘を真実にするフィクション」ってもうそれつまり小説ってことだよね。ここがわかってなかったからわたしはフィクションを毛嫌いしてエッセイばかり読んでいたんだよなあ。そのくせドキュメンタリーとかは嘘ばっかりだから嫌だとか言って。だったら元々わかっててやってる嘘のがよっぽど真実だっていうのに。


話がずれました。
うーん、本文よりもあとがきの方が書き残しておきたい感じがしたな。

どんな人間にもおのおののドラマがあり、人に言えぬ秘密があり、それぞれの特殊事情がある、と大人は考えるが、青年は自分の特殊事情を世界における唯一例のように考える。ふつう、こういう考えは詩を書くのにはふさわしいが、小説を書くのには適しない。『仮面の告白』は、それを強引に、小説という形でやろうとしたのである」(『私の遍歴時代』)

自分は特別だと思うのが青年時代。この辺は「ぼくは勉強ができない」でもあったな。

無邪気そうな悪党、子供のようでいながら大人、芸術家の才能を持った常識人、模造品をつくる詐欺師。だが芸術家とは才能以外のなにものでもない、芸術家とはつまり詐欺師のことではないか、といわれれば、まさにそのとおり―――現代にとっては苦しまぎれのこの逆説を、逆説でなくした人間、あるいはみずから逆説的存在になることによってそれを逆説ではなくそうとしている人間、それが三島由紀夫だ。
(略)
すべての芸術は仮面の告白である。それをことさらこの作品に『仮面の告白』と題せずにはいられなかったのか。理由はおそらくこうであろう―三島由紀夫の若い豊かな才能は仮面を仮面と自覚せずに、ただ「扮装慾」の興味にかられ、「演技」の慾求にひきずりまわされて、仮面そのものをもてあそんできた結果、長ずるにおよんでそれがようやく素面にくいこんできたからではなかろうか。そこに――いいかえれば、仮面をかぶろうとする要求そのものに――三島由紀夫は素面の自己を発見せずにいられなかったのだ。
 人の目に私の演技と映るものが私にとっては本質に還ろうという要求の表れであり、人の目には自然な私と映るものこそ私の演技であるというメカニズムを、このころからおぼろげに私は理解しはじめていた。
が、そのことをはっきり理解したのは『仮面の告白』においてである。(福田)

「模造品をつくる詐欺師」といわれて真っ先ににのみあを思い出してしまってごめんなさい(土下座)。だ、だってみんなが釣り師釣り師言うから!この辺のにのみあ論(ってなにそれ)はひどく長くなりそうだし、「わたしがにのみあを好きってことだけが真実!!!11」とかいうとんでもない結論になりそうなんで割愛。

肉にまで喰い入った仮面、肉づきの仮面だけが告白をすることができる。『告白の本質は不可能だ』ということだ。」(ノート)

いや、真相は、現代においては、素面を追求するしぐさによってしか仮面は完成しえず、素面を仮面と見なさずしては素面は成立しえないということにある。(福田)

後半ほとんど同じことを言っていますが、いろんな言い回しで書き残しておいた方が、忘れっぽいわたしにもちょっとは頭ん中に残るかなあと思って(苦笑)。こ、これむずかしい…。自叙伝小説なんてそれどんな自慰的行為って思ったけど、こうやって誰しもにある「私ってなに?」って問いに対する答えが存在しているからこの作品は今でも読まれているのかも。こうした考察を自分でもできるようになりたいものだ。この文章だってどっかの受け売りみたいだもんねえ…。

「抗えないもの」のあたりは、性同一性障害のひととかニューハーフのひととか共感できるんじゃないかなって思いました(笑)。って笑い事じゃないですよねすみません。わたしにはこの辺を理解するだけの「角」(@ぼくは勉強ができない)を持ってないってことですかね。